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夜のパーキングエリア。私の白いマークX後期の鋭いヘッドライトが、隣に並ぶ現行カムリの巨大なグリルと対峙していた。
「お前の車、燃費どうなのよ? 俺のは余裕でリッター20キロ超えるけど」 カムリ乗りの友人が、最新のデジタルコックピットを自慢げに指差しながら笑う。
確かにカムリは「現代の正解」だ。FF(前輪駆動)ゆえに後部座席の足元は広大で、電動パーキングブレーキも備えている。対して私のマークXは、街乗りでリッター8キロが関の山。足元には時代遅れの足踏み式ブレーキが鎮座し、後席はドライブシャフトが通るトンネルのせいで中央が大きく盛り上がっている。実用性で言えば、完敗だ。
「……でもな、この加速の『雑味のなさ』はカムリじゃ味わえないんだ」
私はそう返し、V6エンジンに火を入れた。4気筒のカムリには決して出せない、重心の低い重厚なハミング。そこへ、兄の駆るクラウンが現れる。セダンの王道だ。マークXはかつて「クラウンに手が届かない者の車」と揶揄されたこともある。だが、この130系後期は違う。スポット溶接の打ち増しで鍛え上げられたボディ剛性は、クラウンの優雅さとは別の、鋭利な「走り」の質感を備えている。
「マークXは、中途半端な車じゃない。FRセダンの面白さを一番素直に教えてくれる教科書なんだ」 兄の言葉に、私は深く頷いた。
深夜の高速。アクセルを深く踏み込めば、V6が官能的な咆哮を上げ、後輪が路面を力強く押し出す。ハンドルに駆動の振動が伝わらないクリアな操作感。スマホ連携も怪しい古いナビや、ハイオクをがぶ飲みする不器用さも、この一瞬の快感の前では些細なことに思えた。
効率や数字では測れない、背中で感じる加速のドラマ。 「正解」を求める奴らに、この不器用で熱いFRの走りを譲るつもりはない。私はミラーに映る鋭い「X」の顔を見つめ、夜の闇へと滑り出した。

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